
日本では盗難件数ランキング常連のランドクルーザーですが、意外にもアメリカではランクルは全然盗まれることのない車なんです。国が違うだけでこうも事情が違うのは、深い理由があります。
この記事では、なぜ世界中で羨望のランドクルーザーがアメリカでは狙われにくいのか、その構造的な理由を紹介します。アメリカで本当に盗難リスクが高い車種や、日本との盗難手口の違いなど詳しく解説します。
- 1. アメリカの盗難車ランキングにランクルが無い
- 2. アメリカの自動車盗難が国内完結型である3つの構造的理由
- 3. 【ランキング】アメリカで最も盗まれている車
- 4. 【州別・都市別で見る】アメリカ自動車盗難のホットスポットと最新動向
- 5. なぜ世界の窃盗団はアメリカのランクルを狙わない?
- 6. 【技術的脅威】未来のランクルを狙うサイバー攻撃の進化
- 7. 新型ランドクルーザー(250系)はアメリカで新たなターゲットになるか
- 8. まとめ
1. アメリカの盗難車ランキングにランクルが無い

かつては犯罪大国という汚名まで語られたアメリカですが、意外にもランクルの盗難は極めて少ないのが実情です。アメリカという国の自動車犯罪は、日本とは違った特徴があります。
1-1. 世界の常識が通用しない国、アメリカ
日本では、ランドクルーザー(プラド含む)が2021年から4年連続で車両本体盗難のワースト1位に君臨。盗まれた車の実に4台に1台以上がランドクルーザーという、異常事態となっています。
対してカナダでは、姉妹車であるレクサスRXやトヨタ・ハイランダーが盗難リストの上位を独占。イギリスやドイツでも、絶対数では目立たなくても、登録台数に対する「盗難率」ではランドクルーザーやその姉妹車がトップクラスのリスクとされています。
このように、多くの先進国で「狙われやすい車」の代名詞となっているランドクルーザーが、世界最大の自動車大国アメリカでは盗難トップ10に過去一度も入ったことはありません。本記事では、この謎について深掘りしていきます。
1-2. 国内完結型と輸出志向型:2つの盗難市場
なぜ、このような大きな違いが生まれるのでしょうか。その答えは、それぞれの国の自動車盗難市場が持つ、根本的な目的の違いにあります。世界の自動車盗難は、大きく二つのタイプに分類できます。
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輸出志向型・専門的市場
日本、カナダ、イギリス、ドイツなどがこの典型です。高度な技術を持つプロの窃盗団が、海外(特にアフリカ、中東、東欧など)の闇市場で高値で取引される車種を組織犯罪として狙います。ランドクルーザーは、その需要の頂点にいるため、集中的にターゲットにされるのです。
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国内完結型・日和見的市場
代表例がアメリカです。盗難の目的は、海外への不正輸出ではなく、そのほとんどが「国内の部品需要」を満たすために盗みます。窃盗団の思考はグローバルではなく、極めてドメスティック。「海外で高く売れるか」よりも、「国内ですぐに現金化できるか」が最優先されます。
この市場構造の違いこそが、ランドクルーザーの運命をアメリカで大きく変えている根本的な理由なのです。
2. アメリカの自動車盗難が国内完結型である3つの構造的理由

アメリカの自動車盗難が、なぜ「国内完結型」というユニークな特徴を持つに至ったのか。その背景にある3つの理由を、アメリカのライフスタイルや文化にも触れながら深く、そして詳細に掘り下げていきましょう。
2-1. 理由①:DIY文化が支える巨大な中古部品経済圏
アメリカはクルマ社会の頂点に立つ国です。ニューヨークのような一部の大都市を除けば、車は生活必需品であり、その保有台数、そして走行距離は世界トップクラス。当然、事故や故障による修理の需要も天文学的な規模になります。ここで重要なのが、アメリカの根底に流れる「DIY(Do It Yourself)文化」です。
日本では車の修理といえばディーラーや専門工場に任せるのが一般的ですが、アメリカでは、週末に自宅のガレージで自分で車をいじるのが趣味であり、生活に根差した文化として深く浸透しています。YouTubeには無数の修理解説動画が溢れ、大手カー用品店では専門的な工具や部品が手軽に手に入ります。高価な工賃を払うのを嫌い、自分でできることは自分でやる、という開拓者精神が今も息づいているのです。
この文化が、安価な中古部品への巨大な需要を生み出しています。そして、この巨大な中古部品市場が、自動車盗難の最大の受け皿、つまり経済的なインセンティブとなっているのです。盗んだ車を秘密の解体工場「チョップショップ」に運び込み、わずか数時間で手際よくバラバラにする。そして、エンジンやトランスミッションといった主要部品から、ドア、バンパー、ヘッドライトといった内外装パーツまで、個別にオンラインのマーケットプレイスや非正規の修理工場ネットワークを通じて売却する。この手口が、アメリカの自動車窃盗における最も確実でポピュラーな現金化ルートとして確立されているのです。
2-2. 理由②:ピックアップトラックという絶対的ターゲット
こうした「部品取り」目的の盗難の主役となるのが、アメリカのライフスタイルそのものを象徴する車たちです。NICB(全米保険犯罪局)の盗難車ランキングを見ると、その顔ぶれは非常に示唆に富んでいます。
長年にわたり上位に君臨するのは、フォードのFシリーズやシボレーのシルバラードといったフルサイズピックアップトラックです。これらは日本の軽トラックのような単なる商用車ではありません。広大な土地での農作業や建設業に欠かせない仕事の道具であり、週末にはボートやキャンピングトレーラーを牽引して湖や国立公園へ向かう家族とのレジャーの相棒であり、カントリーミュージックの歌詞にも頻繁に登場する、アメリカン・ライフの象徴的存在なのです。
それだけ生活に密着し、圧倒的な数が普及しているからこそ、修理部品の需要も絶大。窃盗団にとっては、最も安定した収益が見込める「鉄板のターゲット」というわけです。
同様に、ホンダのアコードやトヨタのカムリといったセダンも、その信頼性と経済性から、通勤や家庭の足として全米の隅々まで普及しており、部品の需要が非常に高い車種として常にリストの上位に入ります。
一方で、ランドクルーザーはアメリカ市場では、その卓越した性能にもかかわらず、比較的高価で販売台数も限られるニッチな存在。熱心なオフロード愛好家や一部の富裕層には支持されていますが、ピックアップトラックのように「一家に一台」という車ではありません。そのため、部品の需要も少なく、窃盗団にとっては「手間がかかる割に儲からないターゲット」と見なされてきたのです。
2-3. 理由③:限定的な不正輸出と国内市場の引力
もちろん、アメリカから盗難車が全く輸出されないわけではありません。特にメキシコとの広大な国境を利用した南米へのルートは存在します。しかし、日本やカナダのように、それが犯罪の主流になるほど活発ではないのです。
これは、ヨーロッパやアジア、中東といった主要な闇市場への物理的な距離が遠く、コンテナ船を使った輸送コストがかかること、そして何より、国内にこれほど巨大で魅力的な換金市場(部品市場)が存在するため、わざわざリスクを冒してまで海外に目を向ける必要性が低いことが理由として考えられます。
結果として、海外の闇市場で絶大な人気を誇るランドクルーザーの「国際的な価値」が、アメリカ国内の窃盗団の行動原理には、ほとんど影響を与えていないのです。彼らにとっては、遠い異国の闇相場よりも、目の前の国内市場の需要が全てなのです。
3. 【ランキング】アメリカで最も盗まれている車

では、実際にアメリカではどの車が盗難の被害に遭っているのでしょうか。その実態は、近年大きく様変わりしました。NICBが発表した2023年の最新データを見てみましょう。
表1:2023年 アメリカ合衆国 車両本体盗難ワースト10
このランキングを見て驚かれた方も多いのではないでしょうか。常連であるピックアップトラックや人気セダンを抑え、上位を韓国のヒョンデとキアが独占しています。なぜ、このような事態になったのでしょう。
3-1. 狙われたのは高度な電子システムではなかった
日本で猛威を振るう「CANインベーダー」のような、高度な電子システムへの攻撃とは異なり、この盗難急増の原因は、驚くほどアナログなものでした。
それは、対象となった一部の車種に、エンジンの始動を制御する盗難防止装置「エンジンイモビライザー」が標準装備されていなかったという設計上の脆弱性です。イモビライザーは、キーに埋め込まれた電子チップのIDコードを車両側が認証しなければエンジンがかからない仕組みで、現代の車では標準的な装備です。しかし、コスト削減のためか、北米仕様の一部のモデルではこれが搭載されていませんでした。
犯人たちは、この弱点を突き、ステアリングコラムのカバーを物理的に破壊し、USBケーブルの先端などを使ってイグニッション(エンジン始動装置)を強制的に回すだけで、いとも簡単にエンジンを始動させ、車両を盗み出すことができたのです。この手口は、高度な技術も特殊なツールも不要で、極めて模倣しやすいものでした。
3-2. SNSで拡散した「キア・チャレンジ」という社会現象
さらにこの問題を深刻化させたのが、TikTokなどのSNSでした。この単純な盗難手口が「#KiaChallenge(キア・チャレンジ)」といったハッシュタグと共に面白半分で拡散され、若者による模倣犯が全米で続出。この現象は単なる自動車盗難にとどまらず、一部の都市でこれらの車種の保険料が天文学的に高騰したり、大手保険会社が新規の保険加入を拒否したりするなど、オーナーを巻き込む大きな社会問題にまで発展しました。
3-3. 高度な電子攻撃とは異なる米国のトレンド
この一連の騒動は、アメリカの自動車盗難が、必ずしも国際的な犯罪組織による計画的な犯行だけでなく、「いかに手軽に盗めるか」という脆弱性や、SNSのような現代的な要因に大きく左右されることを示しています。海外での需要よりも、目の前にある「盗みやすい車」が格好のターゲットになる。これがアメリカ市場のリアルな姿なのです。
4. 【州別・都市別で見る】アメリカ自動車盗難のホットスポットと最新動向

「アメリカ」と一括りに言っても、その国土は広大です。日本の都道府県ごとに治安が違うように、アメリカも州や都市によって自動車盗難のリスクは大きく異なります。ここでは、アメリカの盗難事情をより深く理解するために、地域ごとの傾向と最新の動向を見ていきましょう。
4-1. 盗難が多発する「ホットスポット」はどこか?
全米保険犯罪局(NICB)の分析によると、自動車盗難は特定の地域に集中する傾向があります。特に、人口が多く、都市が密集しているエリアで発生率が高くなります。
伝統的に盗難件数の絶対数が多い州としては、カリフォルニア州が挙げられます。広大な都市圏(ロサンゼルス、サンフランシスコ・ベイエリアなど)を抱え、人口も全米一であることから、必然的に犯罪の母数も大きくなります。また、メキシコとの広大な国境を接していることも、盗難車の移動や売買に影響しているとの指摘もあります。
また、人口10万人あたりの盗難率で見ると、順位は年によって変動しますが、ワシントンD.C.(コロンビア特別区)やコロラド州などが高い数値を示すことがあります。これらの地域は、大都市圏を抱え、州間高速道路網が発達していることが、盗難車を素早く他の地域へ移動させ、解体・売却するのに好都合な環境を生み出していると考えられます。
4-2. 港湾都市と内陸部の違い
日本やカナダでは、港が不正輸出の拠点となるため、港湾都市で高級車の盗難が多発します。一方、アメリカでは前述の通り「国内完結型」が主流のため、必ずしも港の有無が盗難リスクに直結するわけではありません。
むしろ、大都市圏であれば、それが西海岸のロサンゼルスであれ、五大湖に近いシカゴであれ、内陸部のデンバーであれ、高い部品需要が存在するため、どこでも盗難のリスクは存在すると言えます。
4-3. 2024年以降の最新トレンド:盗難件数は減少傾向へ
ここで、一つ明るいニュースがあります。あれほど深刻だったキア・ヒョンデの盗難問題ですが、メーカーによるソフトウェアのアップデートやハンドルロックの無料配布、そして法執行機関による取り締まり強化といった社会全体の対策が進んだ結果、大きな変化が見られました。
NICBの報告によると、2024年のアメリカにおける車両盗難件数は、前年比で17%も減少したとのです
この事実は、アメリカの自動車盗難が、特定の脆弱性という要因に大きく左右され、社会全体で対策が講じられれば劇的に改善する可能性があることを示しています。
しかし、これは同時に、新たな脆弱性が見つかれば、再び特定の車種がターゲットになり、状況が一変するリスクもはらんでいるということです。アメリカの盗難市場は、常に変動するダイナミックな環境にあると言えるでしょう。
5. なぜ世界の窃盗団はアメリカのランクルを狙わない?

アメリカの特異性をさらに深く理解するために、世界各国の盗難事情をケーススタディとして、より詳細に見ていきましょう。
5-1. 世界の盗難リスクが一目でわかるマトリクス
まず、以下の表は、主要国における自動車盗難の全体像と、ランドクルーザーが置かれている状況をまとめたものです。アメリカがいかに特殊な位置づけにあるかが一目瞭然です。
表2:ランドクルーザー盗難リスクのグローバル比較
表2:ランドクルーザー盗難リスクのグローバル比較
|
国 |
全体盗難率 (人口10万人あたり) |
ランクルの盗難順位 |
主な手口 |
現金化手口 |
|
日本 |
11.0 |
ワースト1位 |
CANインベーダー |
不正輸出、部品解体 |
|
カナダ |
274.8 |
ワースト1~3位 |
リレーアタック、CANバス攻撃 |
不正輸出、チョップショップ |
|
英国 |
189.9 |
上位ランクイン |
リレーアタック、CANインベーダー |
不正輸出、部品解体 |
|
ドイツ |
59.0 |
ランク外 |
リレーアタック、ホームジャッキング |
不正輸出 |
|
南アフリカ |
- |
ランク外だがカージャック最多 |
カージャック (強奪) |
不正輸出、部品解体 |
|
アメリカ |
283.5 |
ランク外 |
脆弱性のある特定車種への集中攻撃 |
部品解体 (国内需要) |
5-2. ケーススタディ① 日本:CANインベーダーと異常な被害集中
日本のケースは、高度な技術を用いた組織犯罪の典型です。「CANインベーダー」という、車両の内部ネットワークに直接侵入する手口が主流。犯人たちは、車の電子システムを完全に掌握し、数分で静かに盗み去ります。
これは、ランドクルーザーやレクサスといった、特定の車種の構造的脆弱性を熟知したプロの仕業であり、その目的は海外への不正輸出です。全体的な盗難件数が減少する中で、特定車種への被害が集中しているのが日本の特徴です
5-3. ケーススタディ② カナダ・英国:組織化された不正輸出のハブ
カナダや英国も、不正輸出を目的とした盗難が深刻です。特にカナダのモントリオール港は、盗難車がアフリカや中東へ送られる主要なハブ港として知られています。これらの国では、ランドクルーザーそのものだけでなく、レクサスRXやランドローバー・レンジローバーといった同クラスの高価値SUVが高い盗難率を記録。
窃盗団が「儲かるSUV」をリスト化して計画的に犯行に及んでいることが窺えます。手口はキーレスエントリーの脆弱性を突く「リレーアタック」が主流ですが、CANインベーダーも確認されています
5-4. ケーススタディ③ 南アフリカ:暴力が支配する「ハイジャック」市場
南アフリカの状況は、他の先進国とは一線を画します。ここでの主な脅威は技術的な盗難ではなく、ドライバーを直接襲い、時には命を奪って車を強奪する「カージャック」です。
ランドクルーザーはその頑丈さと悪路走破性から、国境を越える密輸や他の犯罪活動に使われるため、常にカージャックの「ヒットリスト」の上位にあります。ここでは、車のセキュリティ強化と同時に、ドライバー自身の身を守るための対策が最重要課題となります。
6. 【技術的脅威】未来のランクルを狙うサイバー攻撃の進化

アメリカでは今のところアナログな手口が主流ですが、世界の窃盗団が使う手口は日進月歩で進化しています。将来アメリカにも流入する可能性のある、高度な技術的脅威について詳しく見ておきましょう。
6-1. 最凶の電子攻撃「CANインベーダー」の技術的詳細
前述の通り、日本で猛威を振るう「CANインベーダー」は、現代の自動車が抱える構造的脆弱性を突いた攻撃です。CAN(Controller Area Network)は、車内の多数のコンピューター(ECU)を繋ぐ神経網ですが、設計が古く、通信が暗号化されていません
犯人はバンパーの隙間など、外部から物理的にアクセスできるヘッドライトの配線コネクターを見つけ出し、そこに特殊なツールを接続します
6-2. 未だ現役の脅威「リレーアタック」とその対策
キーレスエントリーシステムを搭載した車への脅威として、世界中で依然として広く使われているのが「リレーアタック」です。スマートキーは常に認証のための微弱な電波を発信しています。
犯人グループの一人が、特殊な受信機で家の中にあるキーの電波を捉え、それを増幅して車の近くにいる仲間に中継(リレー)します
この手口への最も効果的な対策は、キーが発する電波を物理的に遮断すること。専用の電波遮断ポーチ(ファラデーポーチ)や、金属製の缶にキーを保管するだけで、リレーアタックをほぼ完全に防ぐことができます
6-3. コネクテッドカーの未来と新たなハッキングリスク
将来的には、さらに高度な脅威が出現する可能性があります。現代の車は、インターネットに常時接続する「コネクテッドカー」へと進化しています。これにより、スマートフォンのアプリで遠隔操作したり、ソフトウェアを無線でアップデート(OTA: Over-The-Air)したりと利便性が向上しました。
しかし、これは同時に新たなサイバー攻撃のリスクも生み出します。悪意のあるハッカーが、車の通信システムに侵入し、遠隔でロックを解除したり、エンジンを始動させたりする。あるいは、OTAアップデートのプロセスを乗っ取り、不正なプログラムを送り込む。そんなSF映画のようなシナリオが、将来現実になる可能性もゼロではありません。自動車メーカーは、こうした未来の脅威に対抗するため、より堅牢なサイバーセキュリティ対策を求められています。
7. 新型ランドクルーザー(250系)はアメリカで新たなターゲットになるか

これまで見てきたように、過去のデータでは、アメリカにおけるランドクルーザーの盗難リスクは低いものでした。しかし、未来も安泰とは限りません。特に、2024年モデルとして新型ランドクルーザー(日本では250系、プラドベース)が米国市場に再導入されたことは、大きな変化点となる可能性があります。
7-1. 新型車の市場ポジショニングと盗難リスクの変化
新しいランドクルーザーがアメリカ市場で人気を博し、販売台数を伸ばしていけば、状況は変わる可能性があります。
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部品需要の増加: 街を走る台数が増えれば、当然、修理用の部品需要も高まります。これは、アメリカの窃盗団が最も重視するポイントであり、これまでターゲット外だったランドクルーザーが「部品取り」の対象として魅力を増すかもしれません。特に、オフロード走行で破損しやすいバンパーやサスペンションパーツなどは、闇市場での需要が生まれる可能性があります。
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認知度の向上とターゲット化: 新型車の登場でランドクルーザーのブランド認知度が高まることで、犯罪者の目に留まりやすくなる可能性も否定できません。「新しくて高価なSUV」という認識が広まれば、これまで興味を示さなかった窃盗犯がターゲットとして認識し始めるかもしれません。
7-2. 犯罪手口のグローバル化という避けられない流れ
最も警戒すべきは、犯罪手口のグローバル化です。現在、アメリカの盗難手口は比較的アナログなものが主流ですが、日本やヨーロッパで猛威を振るう「CANインベーダー」のような高度な電子攻撃ツールが、いつアメリカの犯罪市場に流入してきてもおかしくありません。インターネットを通じて、これらの攻撃ツールの情報や現物が、国境を越えて流通するのは時間の問題かもしれません。
もし、CANインベーダーが悪用され始めると、トヨタやレクサスといった、これまで比較的安全とされてきた高度なセキュリティを持つ車種の盗難リスクが一気に高まる恐れがあります。新型ランドクルーザーも、その例外ではないでしょう。
8. まとめ

今回は、アメリカにおけるランドクルーザーの盗難事情に焦点を当て、そのユニークな背景とリアルな実態を、多角的な視点から深く掘り下げて解説しました。
【アメリカのランクル盗難事情のポイント】
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アメリカでは、ランドクルーザーは盗難の主要ターゲットではなく、盗難車ランキングの圏外である。
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理由: アメリカの自動車盗難は、海外への不正輸出ではなく、「国内の部品需要」を満たすための「国内完結型」が主流。そのため、国内に多数存在するピックアップトラックや人気セダンが主な標的となる。
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米国のトレンド: 近年の盗難は、キア・ヒョンデ車に見られたイモビライザー非搭載といった物理的な脆弱性を突いたものが中心だったが、社会全体での対策が進み2024年には全体の盗難件数が減少に転じた。
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今後のリスク: 2024年に新型ランドクルーザーが再導入されたことで、将来的に人気が高まれば部品需要も増え、リスクが上昇する可能性はある。また、「CANインベーダー」のような新たな手口の流入にも警戒が必要。
アメリカの自動車盗難事情は、他の国々と比べて非常に特殊です。それは、単に犯罪者の質の差ではなく、その国の自動車文化、経済構造、そして社会のあり方そのものが反映された結果です。
海外の自動車事情やセキュリティに関する情報は、常に変化しています。リレーアタックやCANインベーダーがそうであるように、海外で新たな盗難手口が出現した場合は、ほどなくして日本の窃盗団にも普及することが常です。ランクルなど狙われやすい車に乗っている方は、今後は海外の盗難情報にもアンテナを張りながら、最新の盗難動向に注意する必要がありそうです。