ヤリスクロスのハイブリッド4WD「E-Four」の購入を考えているけど、「コンパクトSUVの4WDって、雪道で本当に大丈夫?」「冬の坂道で登れなかったらどうしよう…」と、冬の道での実力に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、トヨタ ヤリスクロスのE-Fourの仕組みからガソリン4WDとの違い、滑りやすい雪道でのリアルな走行性能、そしてオーナーだからこそ分かる意外な弱点まで、専門家とユーザー両方の視点から徹底的に解説します!
- 1. 結論:ヤリスクロスのE-Fourは雪道でも十分通用する
- 2. そもそもヤリスクロスのE-Fourとは?普通の4WDとの違いを解説
- 3. 【シーン別】ヤリスクロス E-Fourの雪道走行性能を徹底レビュー
- 4. ここが弱点?ヤリスクロス 4WDで雪道を走る際の注意点
- 5. 口コミ・評判から見るヤリスクロス E-Fourの雪道でのリアルな評価
- 6. ヤリスクロスの雪道性能を最大限に引き出すためのポイント
- 7. まとめ:ヤリスクロス E-Fourはこんな人におすすめの4WD
- 8. 【余談】同じE-Fourでも実は違う?ヤリスクロスと他車種のシステム比較
1. 結論:ヤリスクロスのE-Fourは雪道でも十分通用する
「結局のところ、ヤリスクロスのE-Fourは雪道で使えるの?」という疑問に、まず結論からお答えします。
雪国の日常的な使い方であれば、十分安心して乗れる性能を持っています。
多くの方が心配される圧雪路や凍結路での発進、通勤路にあるような坂道、交差点での安定性など、日常で遭遇するほとんどの雪道シーンで、E-Fourは頼もしい相棒になってくれます。
その理由は、後輪をモーターで駆動するE-Fourならではの緻密で素早い制御にあります。前輪がスリップしたのを検知してから後輪に駆動力を伝えるまでのタイムラグが非常に少なく、滑りやすい路面でもスムーズかつ安定した走行を可能にしているのです。
ただし、ここで一つ重要なことをお伝えしなければなりません。それは、「E-Fourは万能ではない*ということです。
例えば、本格的なクロスカントリー車が走るような深い雪道や、極端に険しい悪路の走破を目的としたシステムではありません。あくまで「生活四駆」として、日常の安全性を高めるためのシステムだと理解することが大切です。
この記事では、まずE-Fourがどのような仕組みなのか、そしてガソリン車の4WDやライバル車と何が違うのかを詳しく解説します。その上で、様々な雪道シーンでの具体的な性能をレビューし、メリットだけでなく「弱点」や「注意点」にもしっかりと踏み込んでいきます。
この先を読み進めていただければ、「ヤリスクロス E-Fourが自分の使い方に本当に合っているのか」を、自信を持って判断できるようになるはずです。
2. そもそもヤリスクロスのE-Fourとは?普通の4WDとの違いを解説
「E-Four」という言葉はよく聞くけれど、一体どんな仕組みで、普通の4WDと何が違うのか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、ヤリスクロスの雪道性能を理解する上で欠かせない、E-Fourの基本を分かりやすく解説します。
2-1. 電気式4WDシステム「E-Four」の仕組み
E-Fourは、トヨタのハイブリッド車に採用されている「電気式4WDシステム」の愛称です。
従来の一般的な4WD(機械式4WD)が、エンジンの力を「プロペラシャフト」という金属の棒を使って後輪に伝えていたのに対し、E-Fourは後輪専用の独立したモーターを搭載し、電気の力で後輪を駆動するのが最大の特徴です。
【E-Fourのメリット】
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緻密で素早い駆動力制御: タイヤのスリップを検知すると、瞬時に後輪モーターへ電気信号を送り駆動力を発生させます。機械的な接続がないため、応答が非常に速く、滑りやすい路面でも安定した走行が可能です。
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低燃費: 普段の乾いた道路では基本的に前輪駆動(FF)で走行し、必要な時だけ後輪モーターを作動させるため、4WDでありながら燃費の悪化を最小限に抑えられます。
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室内空間の広さ: 車両中央を貫くプロペラシャフトが不要なため、後部座席の足元がフラットになり、室内空間を広く使えるというメリットもあります。ヤリスクロスでは、後席中央の足元の出っ張りが少ないのが嬉しいポイントですよね。
つまりE-Fourは、「燃費の良さ」と「必要な時の安定性」を両立させた、非常に賢い4WDシステムなんです。
2-2. ガソリン車の4WD(ダイナミックトルクコントロール4WD)との性能差
ヤリスクロスには、ハイブリッド車の「E-Four」の他に、ガソリン車にも4WDの設定があります。こちらは「ダイナミックトルクコントロール4WD」という、より一般的な機械式の4WDシステムです。
この2つのシステム、雪道での性能にどのような違いがあるのでしょうか。
一方、ガソリン車の4WDは、よりパワフルで、後輪へ伝えられる駆動力の割合も大きいのが特徴です。深い雪道から脱出する時など、力強い駆動力が求められるシーンでは、ガソリン車の4WDの方が頼もしく感じられる場面もあるかもしれません。
どちらが優れているというよりは、「緻密な制御のE-Four」か「パワフルなガソリン4WD」か、という特性の違いと理解するのが正解です。街乗りや通勤がメインで、燃費も重視したいならE-Four。アウトドアなどでよりタフな走りを求めるならガソリン4WDも魅力的な選択肢となります。
2-3. ライバル車(コンパクトSUV)の4WDシステムとの比較
ヤリスクロスの購入を検討する際、ホンダのヴェゼルや日産のキックスといったライバル車の存在も気になりますよね。これらのライバル車の4WDシステムとE-Fourを比較してみましょう。
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ホンダ ヴェゼル e:HEV(リアルタイムAWD): ヴェゼルのハイブリッド4WDも、基本的にはE-Fourと同じくプロペラシャフトを持たない電気式4WDですが、後輪モーターの出力がE-Fourよりも大きいのが特徴です。そのため、より力強い後輪駆動が可能で、悪路走破性や雪深い道での安定感はヴェゼルの方が一枚上手という評価が多いです。ただし、その分、車両価格や燃費面ではヤリスクロスが有利になる傾向があります。
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日産 キックス(e-POWER 4WD): キックスのe-POWER 4WDは、前後ともにモーターで駆動する本格的な電動駆動システムです。特に後輪モーターの出力が非常に大きく、緻密な制御とパワフルさを両立しています。雪道での安定性や走破性は非常に高く評価されており、コンパクトSUVクラスではトップクラスの性能と言えるでしょう。ただし、システムが高度な分、価格も高めになる傾向があります。
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トヨタ カローラクロス(E-Four): 同じトヨタのカローラクロスも、ヤリスクロスと同じE-Fourを搭載しています。ただし、車格が上のカローラクロスの方が、より高出力な後輪モーターを搭載しているため、雪道での登坂能力や安定性はカローラクロスの方が高いとされています。
このように比較すると、ヤリスクロスのE-Fourは、コンパクトSUVの4WDシステムの中では「燃費と価格のバランスに優れた、生活四駆の優等生」という立ち位置になります。日常的な雪道での安全性を確保しつつ、経済性も妥協したくない、というニーズに最もマッチしたシステムだと言えるでしょう。
3. 【シーン別】ヤリスクロス E-Fourの雪道走行性能を徹底レビュー
E-Fourの仕組みが分かったところで、いよいよ本題です。「実際の雪道で、ヤリスクロスはどんな走りを見せるのか?」を、ドライバーが遭遇する具体的なシーンに分けて、徹底的にレビューしていきます。
3-1. 雪道での発進と加速のスムーズさ
雪道で最も気を使う瞬間の一つが、信号待ちからの発進ではないでしょうか。
ヤリスクロスのE-Fourは、この発進シーンで最もその真価を発揮します。
アクセルをじわっと踏み込むと、前輪が滑るか滑らないかの絶妙なタイミングで、後輪のモーターがアシストを開始します。この連携が非常にスムーズなため、ドライバーは4WDに切り替わったことをほとんど意識することなく、まるで乾いた路面のようにスッと車体を前に進めることができるのです。
これは、応答速度の速い電気式ならではの大きなメリットです。機械式の4WDだと、前輪が「ズルッ」と滑ってから、少し間を置いて後輪が「グッ」と押し出すような感覚がある車種もありますが、E-Fourにはそのギクシャク感がほとんどありません。
特に、運転に不慣れな方や、雪道での発進に苦手意識がある方にとっては、このストレスのないスムーズな発進性能は、非常に大きな安心材料となるはずです。
3-2. 凍結路や圧雪路の坂道は登るのか 登坂性能をチェック
「家の前の坂道が凍結したら登れるだろうか…」 「スキー場の急な坂道を無事にクリアできるか心配…」
坂道での性能、いわゆる登坂性能は、雪国に住む方にとって死活問題ですよね。
結論から言うと、ヤリスクロスのE-Fourは、日常的な圧雪路やミラーバーン(凍結路)の坂道であれば、問題なく登ることができます。
前輪が空転を始めると即座に後輪が駆動力を発生させ、車体を力強く押し上げてくれます。実際に多くのオーナーから、「通勤路の凍結した坂道も安心して登れる」「スキー場までの道も不安なく走れた」といった声が寄せられています。
ただし、注意点もあります。E-Fourの後輪モーターは、あくまで発進時や滑りやすい路面でのアシストが主な役割であり、常に高出力を発生し続けることは想定されていません。そのため、
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完全に停止した状態からの、急なアイスバーンの坂道発進
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新雪が深く積もった、未除雪の急坂
といった、非常に厳しい条件下では、登りきれない可能性もゼロではありません。特に、タイヤが完全にグリップを失ってしまうようなツルツルの氷の上では、どんな4WDでも限界があります。
とはいえ、これはヤリスクロスに限った話ではなく、他の多くのコンパクトSUVにも共通して言えることです。常識的な範囲の雪道の坂であれば、E-Fourの登坂性能に不満を感じることはまずないでしょう。
3-3. カーブや交差点での安定性
雪道で怖いのは、発進や坂道だけではありません。カーブや交差点でハンドルを切った際に、車体が外側に膨らんでしまう「アンダーステア」も、ヒヤッとする原因の一つです。
ヤリスクロスのE-Fourは、旋回時の安定性向上にも貢献します。
カーブを曲がる際、システムが「これから滑りそうだ」と判断すると、前後の駆動力配分を最適にコントロール。これにより、タイヤのグリップ力を最大限に引き出し、車体がスムーズにカーブをトレースできるようアシストしてくれます。
特に効果を発揮するのが「SNOWモード」です。このモードを選択すると、アクセル操作に対するトルクの出方がより穏やかになり、駆動力の制御も雪道に最適化されます。カーブの手前でしっかりと減速し、SNOWモードでじわっとアクセルを踏みながら曲がっていくと、車体がピタッと安定するのを感じられるはずです。
もちろん、物理の法則を超えることはできません。オーバースピードでカーブに進入すれば、どんな高性能な4WDでも滑ってしまいます。しかし、「いつもより少しだけ安心してハンドルを切れる」という感覚は、雪道での精神的な負担を大きく軽減してくれます。
3-4. 滑りやすい雪道でのブレーキ性能
最後に、ブレーキ性能についてです。ここで一つ、非常に重要なことを覚えておいてください。
「4WDは、曲がる・止まる性能を直接的に高めるものではない」ということです。
4WDはあくまで「前に進む力」を助けるシステムです。ブレーキを踏んだ時の制動距離(止まるまでの距離)は、駆動方式に関わらず、タイヤのグリップ性能とABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の性能で決まります。
ですから、「4WDだから雪道でも急に止まれる」と考えるのは絶対に禁物です。
ヤリスクロスも例外ではありません。滑りやすい路面で強くブレーキを踏めば、ABSが作動して「ガガガッ」という音と共に制動をアシストしてくれますが、乾いた路面と同じ感覚で止まれるわけではありません。
雪道での安全は、何よりも質の良いスタッドレスタイヤを装着すること、そして「急」のつく操作(急ブレーキ、急ハンドル、急加速)を避け、十分な車間距離をとることが基本中の基本です。E-Fourの安定性を過信せず、常に余裕を持った運転を心がけることが、最も大切なことなのです。
4. ここが弱点?ヤリスクロス 4WDで雪道を走る際の注意点
ここまでE-Fourの優れた点を紹介してきましたが、物事には必ず裏表があります。メリットばかりを鵜呑みにせず、弱点や苦手な状況を正しく理解しておくことが、後悔しないクルマ選びの鍵となります。ここでは、ヤリスクロスで雪道を走る際の注意点に、正直に切り込んでいきます。
4-1. 過信は禁物 E-Fourの限界と苦手な状況
繰り返しになりますが、ヤリスクロスのE-Fourは「生活四駆」です。本格的な悪路走破性を追求したシステムではありません。そのため、以下のような状況は苦手としています。
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深い新雪(深雪)のラッセル走行: 除雪されていない深い雪の中を、道を切り開きながら進むような走りは想定されていません。後輪モーターの出力には限界があり、強い抵抗がかかり続けると、システム保護のために作動が制限される可能性があります。
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タイヤが完全に埋まってしまうようなスタック状態からの脱出: タイヤが完全に空転してしまうような状況では、E-Fourの駆動力だけでは脱出が困難な場合があります。特に、前後どちらかのタイヤが完全に浮いてしまうようなモーグル地形(コブが連続するような地形)は非常に苦手です。
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長時間の連続した登坂: スキー場の延々と続くような急な登り坂など、後輪モーターに高い負荷がかかり続けるような状況も得意ではありません。熱によるシステム保護が働く可能性があります。
E-Fourは、あくまで「滑りやすい路面での走行を安定させるアシスト役」と捉えましょう。ジムニーやランドクルーザーのような本格クロカン車と同じような感覚で過酷な道に進入するのは避けるべきです。「みんなが走る普通の雪道なら安心」、このくらいの認識がちょうど良いでしょう。
4-2. 深雪やわだちでの走破性 最低地上高は大丈夫か
雪道、特にわだちが深くなった道や除雪が追いついていない道を走る際に重要になるのが「最低地上高」です。これは、地面とクルマのボディの一番低い部分との距離のことで、この数値が大きいほど、雪や障害物に車体下部を擦りにくくなります。
ヤリスクロスの最低地上高は170mmです。
これは、一般的な乗用車(140mm~150mm程度)よりは高いですが、本格的なSUVとしては標準的か、やや低めの数値です。例えば、同じトヨタのRAV4は190mm~200mm、スズキのハスラーでも180mmあります。
そのため、大雪が降って深いわだちができた道では、車体の下をガリガリと擦ってしまう可能性があります。特に、硬く凍ったわだちの氷にバンパー下部をヒットさせて割ってしまう、といったケースも考えられます。
わだちの深い道を頻繁に走行する可能性がある地域にお住まいの方は、この最低地上高がネックになる可能性も考慮しておいた方が良いでしょう。
4-3. オーナーが語る雪道での意外なデメリット
カタログスペックだけでは見えてこない、実際に雪国でヤリスクロス E-Fourを使っているオーナーだからこそ分かる、意外なデメリットも存在します。
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ワイパー下の雪が溶けにくい: ヤリスクロスはデザインを優先しているためか、フロントガラス下部の黒い樹脂部分にデフロスター(霜取り)の温風が当たりにくく、ワイパー周辺に溜まった雪や氷がなかなか溶けない、という声が聞かれます。ワイパーを立てて駐車するなどの工夫が必要になるかもしれません。
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燃費の悪化: これはE-Four特有のデメリットではありませんが、雪道では燃費が悪化します。4WDシステムが作動することに加え、スタッドレスタイヤの転がり抵抗の増加、暖房(エアコン)の使用、暖機運転の増加などが重なるためです。ハイブリッドの燃費の良さを期待していると、「思ったより伸びないな」と感じるかもしれません。具体的な燃費については、後の章で詳しく解説します。
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車両価格と重量の増加: 当然ながら、E-Fourは2WD(FF)モデルに比べて車両価格が高くなります(約24万円高)。また、後輪モーターや関連部品が追加されるため、車両重量も重くなります。この価格差と、雪道を走らない時期の燃費のわずかな悪化をどう捉えるか、という視点も必要です。
これらのデメリットを事前に知っておくことで、購入後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。
5. 口コミ・評判から見るヤリスクロス E-Fourの雪道でのリアルな評価
ここまで専門的な視点から解説してきましたが、やはり気になるのは実際に乗っている人たちの「生の声」ですよね。ここでは、インターネット上の口コミサイトやSNSから、ヤリスクロス E-Fourの雪道性能に関するリアルな評価を集めてみました。
5-1. 「安心して運転できる」という肯定的な口コミ
まず、圧倒的に多いのが、その安定性を評価する肯定的な意見です。
「北海道のミラーバーンの交差点でも難なく発進できる。以前乗っていたFF車とは大違い。」
「スキー場の駐車場入り口で他のFF車が立ち往生している横をスイスイ登っていくことができた。E-Four、思った以上に頼りになります。」
「冬場はリッター18kmくらいまで落ちますが、それでも以前のガソリン4WD車と比べたら雲泥の差。」
このように、発進のスムーズさ、登坂性能、そして燃費の良さを両立している点が高く評価されています。特に、FF車から乗り換えた方や、雪道運転に不安を感じていた方からの「安心感が増した」という声が非常に多く見られました。これは、E-Fourの緻密な制御が、ドライバーの精神的な負担を軽減していることの証と言えるでしょう。
5-2. 「過信はできない」という注意喚起の口コミ
一方で、E-Fourの限界を指摘する冷静な意見も存在します。
「調子に乗って深い雪道に入ったらスタックした。あくまで生活四駆と割り切るべきで、本格的なオフロード性能を期待すべきではない」
「最低地上高がもう少しあれば…。わだちが深い雪道では腹下を擦る。」
「やはりタイヤの性能に依存する。良いスタッドレスを履けば2WDも4WDも遜色ない」
これらの意見は、決してE-Fourを否定しているわけではなく、「性能の限界を正しく理解して乗ることが重要だ」という、経験に基づいた貴重なアドバイスです。メリットだけでなく、こうした注意点にも耳を傾けることで、ヤリスクロス E-Fourというクルマをより深く理解し、安全なカーライフを送ることができるはずです。
6. ヤリスクロスの雪道性能を最大限に引き出すためのポイント
ヤリスクロス E-Fourが持つ雪道性能。それを最大限に引き出し、より安全・快適に冬を乗り切るためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、「タイヤ選び」「運転モードの活用」「燃費対策」の3つの観点から、具体的なコツを伝授します。
6-1. E-Fourに最適なスタッドレスタイヤの選び方
どんなに優れた4WDシステムを搭載していても、雪や氷と直接触れ合うタイヤの性能が低ければ、その力は路面に伝わりません。E-Fourの性能を100%引き出すも殺すも、スタッドレスタイヤ次第と言っても過言ではないのです。
では、どのようなスタッドレスタイヤを選べば良いのでしょうか。ポイントは「氷上性能」を重視することです。
ヤリスクロスのようなコンパクトSUVは、車重が比較的軽いため、タイヤを路面に押し付ける力が弱くなりがちです。そのため、タイヤ自体のグリップ力、特に凍結路での性能が非常に重要になります。
【おすすめのスタッドレスタイヤブランド】
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ブリヂストン「ブリザック」シリーズ: 「発泡ゴム」という独自の技術で、氷の上の水膜を効果的に除去し、氷にしっかりと密着します。「氷上の効き」を最優先するなら、間違いのない選択肢の一つです。
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ヨコハマ「iceGUARD」シリーズ: こちらも吸水と密着技術に定評があり、氷上性能の高さで人気です。燃費性能にも配慮したモデルもあり、ハイブリッド車であるヤリスクロスとの相性も良好です。
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ダンロップ「WINTER MAXX」シリーズ: 氷上性能はもちろんのこと、雪上性能やライフ性能(長持ちするかどうか)のバランスに優れたシリーズです。
これらのブランドの中から、お住まいの地域の雪質(パウダースノーが多いか、湿った雪が多いかなど)や、ご自身の運転スタイル、そして予算に合わせて選ぶのが良いでしょう。迷った時は、タイヤ専門店のスタッフに相談してみるのが一番です。彼らはタイヤのプロであり、あなたのヤリスクロスに最適な一本を提案してくれるはずです。
6-2. 「SNOWモード」の効果的な使い方
ヤリスクロス E-Fourには、雪道走行をサポートするための専用モード「SNOWモード」が搭載されています。このスイッチ、ただの飾りではありません。適切に使うことで、雪道での安定性が格段に向上します。
【SNOWモードの主な効果】
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アクセルレスポンスの最適化: アクセルペダルを踏んだ時のトルクの出方を、通常モードよりも穏やかに(マイルドに)します。これにより、デリケートなアクセル操作がしやすくなり、発進時などの不要なタイヤの空転を防ぎます。
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4WD制御の最適化: 通常モードよりも早い段階から、積極的に後輪へ駆動力を配分するように制御が変わります。これにより、滑りやすい路面での安定性が向上します。
【効果的な使い方】
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圧雪路や凍結路を走る時: 基本的に、雪が積もっていたり、凍結していたりする道を走る際は、常にONにしておくのがおすすめです。
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特に効果を体感できるシーン:
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発進時: よりスムーズで安定したスタートが切れます。
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登り坂: タイヤの空転を抑え、安定した登坂をサポートします。
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カーブ: 旋回中の車体の挙動が安定し、安心してハンドルを切れます。
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逆に、乾いた舗装路で使うと、少しアクセルが鈍く感じられるかもしれません。状況に応じてON/OFFを使い分けるのが賢い使い方です。雪道に入ったら、まずSNOWモードのスイッチを押す。これを習慣にしましょう。
6-3. 雪道での燃費はどれくらい?燃費を悪化させない運転のコツ
ハイブリッド車を選ぶ一番の理由が「燃費の良さ」という方も多いでしょう。しかし、冬の雪道では、残念ながら燃費は悪化してしまいます。
ヤリスクロス E-Fourの雪道での実燃費は、おおむね15km/L~20km/Lあたりに落ち着くことが多いようです。夏場の燃費(22km/L~26km/L程度)と比較すると、2~3割ほど悪化する計算になります。
【雪道で燃費が悪化する主な理由】
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エンジンが冷えやすい: 外気温が低いため、エンジンが温まりにくく、始動時や低速走行時にエンジンがかかる時間が増えます。
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暖房(エアコン)の使用: 暖房はエンジンの熱を利用しますが、コンプレッサーの作動などで燃費に影響します。
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4WDシステムの作動: 後輪モーターを動かすための電力消費が増えます。
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スタッドレスタイヤの装着: 一般的に夏タイヤよりも転がり抵抗が大きく、燃費が悪化します。
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走行抵抗の増加: 雪を踏みしめて走るため、路面からの抵抗が大きくなります。
では、少しでも燃費の悪化を抑えるためには、どうすれば良いのでしょうか。
【燃費を悪化させない運転のコツ】
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「急」のつく操作を避ける: これは安全運転の基本ですが、燃費にも直結します。急加速、急ブレーキは最も燃費を悪化させる要因です。丁寧でスムーズな運転を心がけましょう。
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車間距離を十分に保つ: 前の車との距離に余裕があれば、無駄な加減速が減り、一定の速度で走りやすくなります。
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丁寧なアクセルワーク: SNOWモードを活用し、アクセルをじわっと踏み込むことで、エネルギーの消費を抑えられます。
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暖機運転はほどほどに: 最近のクルマは、長時間の暖機運転は不要です。エンジンをかけたら、ゆっくりと走り出しながら温める「暖機走行」の方が効率的です。
これらのコツを意識するだけで、冬場の燃料代を少しでも節約することができるはずです。
7. まとめ:ヤリスクロス E-Fourはこんな人におすすめの4WD
ここまで、トヨタ ヤリスクロス E-Fourの雪道性能について、その仕組みから具体的な走行性能、弱点、そして性能を最大限に引き出すコツまで、多角的に解説してきました。
【この記事のポイント】
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E-Fourは雪国の日常使いで十分な性能を持つ、賢い電気式4WDシステム。
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滑りやすい路面での発進や加速は非常にスムーズで、安定性が高い。
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日常的な雪道の坂道であれば、登坂性能も問題ないレベル。
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一方で、深雪や本格的な悪路走破性は苦手。最低地上高も万能ではない。
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性能を過信せず、質の良いスタッドレスタイヤと安全運転が最も重要。
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SNOWモードや運転のコツを活用すれば、より安全・快適に冬を越せる。
これらの情報を総合すると、ヤリスクロス E-Fourは、特に以下のような方に強くおすすめできるクルマだと言えます。
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普段は街乗りや通勤がメインだが、冬場は雪が降る地域にお住まいの方
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雪道での運転に不安があり、とにかく安心して走れるクルマが欲しい方
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4WDの安定性は欲しいけれど、燃費の良さも絶対に妥協したくない方
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本格的な悪路は走らないが、スキーやスノーボードなど冬のレジャーに出かける方
逆に、日常的に深いわだちのある道を通る方や、ジムニーのような本格的なクロカン性能を求める方には、少し物足りない部分があるかもしれません。
ヤリスクロス E-Fourは、日本の多くのドライバーが求める「日常の使いやすさ」「経済性」「時々の雪道での安心感」という3つの要素を、非常に高い次元でバランスさせた一台です!
8. 【余談】同じE-Fourでも実は違う?ヤリスクロスと他車種のシステム比較
ここまでヤリスクロスのE-Fourについて詳しく解説してきましたが、「そういえば、ハリアーやアルファードにもE-Fourってあるけど、全部同じなの?」と疑問に思った方もいるかもしれませんね。
実は、同じ「E-Four」という名前でも、搭載される車種によってリアモーターの出力が異なり、その性能も大きく違うんです。これは、クルマの重さや大きさ、そして求められる走行性能に合わせて、最適なシステムが選ばれているからなんですね。
ここでは、代表的な車種のリアモーターのスペックを比較してみましょう。
この表を見ると、その差は一目瞭然ですよね。 RAV4やハリアーに搭載されているE-Fourは、ヤリスクロスのものと比較して、パワー(最高出力)で約10倍、トルク(瞬発的な力強さ)で2倍以上も強力なんです。
なぜ、ここまで出力が違うのでしょうか?
それは、それぞれのクルマの役割が違うからです。
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ヤリスクロス(コンパクトクラス)のE-Four: 主な目的は、「滑りやすい路面での発進補助と走行安定性の確保」です。日常的な雪道で安心感を得るための、いわば「縁の下の力持ち」。システムを軽量・コンパクトにすることで、燃費への影響を最小限に抑え、価格も手頃にしている、非常にバランスの取れた設定です。
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RAV4やハリアー(ミドルSUVクラス)のE-Four: 発進補助に加え、「より積極的に走りを楽しむための駆動力」という役割も担っています。例えば、滑りやすい路面から脱出する際に役立つ「TRAILモード」では、この強力なリアモーターを積極的に使うことで、本格的なSUVに匹敵するような高い悪路走破性を実現しています。登坂能力や高速走行時の安定性も、ヤリスクロスより一枚上手なのは、このリアモーターの力強さがあってこそなのです。
このように、同じE-Fourという名前でも、その実力は車格に見合ったものとなっています。 ヤリスクロスのE-Fourは、決して非力というわけではなく、「ヤリスクロスというクルマのキャラクターに最もマッチした、燃費と安全性のベストバランスを追求したシステム」と理解するのが正しいでしょう。自分の使い方に合ったE-Four搭載車を選ぶことが、満足度の高いカーライフに繋がりますね。